「すっごーい!ね、ふかふかだよ黒崎くん!」 「あんまり走ると転ぶぞー」 <br><br>そのままの流れで、一緒に帰ることになった。 コートにマフラーと手袋、井上はさらに耳あてを装備して、真っ白い雪が降る中を二人で歩く。 雪は音もなく積もっていく、だから余計に、空気の音が聞こえる、そんな錯覚を起こす。 その中で響く、井上の声。 栗色の髪が、真っ白い景色の中で揺れる。 無邪気に走る背中が降り続ける雪に掻き消されそうになって、追いかけるために走り出した。 <br><br>「ゆーきやこーんこー、あーられーやこーんこー」 「井上、だから、あんま走るなって」 「ふってーもふってーもまーだふーりやーま、あわっ!?」 「いっ、井上!?」 <br><br>ずべしゃ。 そんな音がして、揺れていた栗色の髪が白い景色に消えた。 <br><br>「...あーあー。言わんこっちゃねぇ」 「あはは、ほんとだね」 <br><br>足を止めた。 道路の真ん中で大の字に寝っ転がってる井上を、見下ろす。 <br><br>「うわぁ、すっごいふかふか。黒崎君も寝てみなよ!」 「遠慮しとく。つかおまえ、変なカッコ、...っ」 <br><br>可笑しくなって、笑ってしまった。 井上は、何故だか照れ笑い。 寒いのだろうか、頬やら鼻の頭やら、色んなとこが赤い。 手を差し出すと、楽しそうに笑った。 繋がった手からは、温もりは伝わったりしなかったけど。 あたし型の雪形ができたよってはしゃぐ井上の背中が真っ白になってるのに、また笑ってしまった。 <br><br>「あれ?黒崎くんの家、あっちじゃ」 「ほっといたらまた転びそーだからな、おまえ」 「ええっ、い、いいよ!こんな寒いし!」 「いいから。確かこっちだよな、井上ん家」 「う、あ、ま、待って」 <br><br>そうして、また二人並んで歩き出す。 試験の話とか進路の話とか抜きにして、くだらない話をする。 笑って、笑って。 ときどき静かになる空気さえ、心地よくて。 ただ、雪の降る音に耳を傾けてみたり。 疲れが、すぅと引いていくかんじ。 今だけ、自分で溜め込んだものを全部、忘れて。 もうしばらく、こんな時間が続けばいいな、もうしばらく、一緒に居られたらな。 そんなことが頭を過ぎった、井上の自宅前。 足を止めて、扉を見上げた。 <br><br>「あの」 「......」 「黒崎くん」 「...ん?なんだ?」 「あのね、もし、迷惑じゃなかったら」 <br><br><br><br>ゆきあそびでも、どうですか?
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