「ふーん。導きの杖、ねぇ。そんなに危険なものなの?」 話を聞いたメリッサちゃんはそう言って首を傾げた。「信じられないかもしれないけど、一人の女が国の重要人物を丸ごと洗脳したんだ。今回は相手がエイミーだったからまだ何とかなったけど、もっと野心の強いやつがその力を手にしていたら世界が終わっていたかもしれないんだ」「そうなの? ふぅん。でも、風の神様がそう言っていたならそういうものなのかしら?」 メリッサちゃんはあまりピンとはきていない様子だが、神様が言っていたことだということで無理矢理納得した様子だ。「それで神様の言っていた『常に風が吹き常に氷のある場所』に、世界を旅したメリッサちゃんたちなら心当たりがあるんじゃないかと思ったんだ」「そうね。ここの神殿じゃダメなのかしら?」「氷はないし、そうなんじゃないかな」「そうね......。だとするとやっぱり北の寒い場所かしら? でもあたしたちも寒いところは嫌だったから北はあまり行っていないのよね」「そっか......」 そう簡単にはいかないようだ。「では、何か不思議な場所は見かけませんでしたか? メリッサ」「あら、アナちゃん。随分とお淑やかな喋り方になったわね」「はい。私はもうアレンの妻となったのですから、これからは淑女らしくありたいのです」「あら。いいわね。うちのジェリーももうちょっとしっかりしてくれるといいんだけどねぇ」 メリッサちゃんはちらりと離れた場所でシエルちゃんと遊んでいるジェローム君を見た。 相変わらずあちこちを甘噛みされたりじゃれつかれたりしている。かなり激しいので人間があれをやられたら大怪我してしまいそうだが、さすがにそこはスカイドラゴンなだけあって無傷のようだ。「それで、不思議な場所だったわね。そうね......」 メリッサちゃんは首を傾げてしばらく考え込んだ。「あ、そうだ。たしかどこかの森で妙に魔力の濃い場所があったわね。どこだったかしら......」 そう言って再びメリッサちゃんは考え込む。そして再びジェローム君の方に首を動かす。「ねぇ、ジェリー」「な、なあに? う、うわっ。ちょっと、今はママに話しかけられているから」「シエル!」 メリッサちゃんの一言でシエルちゃんはジェローム君にじゃれつくのをやめるが、構ってほしそうな顔をしてこちらを見てきた。「きゅー?」「仕方ありません」 アナはすっと立ち上がるとシエルちゃんのところに行き、頭を優しく撫でてあげた。「きゅー」 シエルちゃんは嬉しそうに頭をアナの手に擦りつけて甘えている。「あ、あ、あ、ありがとう」「いえ」「そ、そ、それで、メリッサちゃん。なあに?」「ほら。あたしたちが旅行に行っていたときに、妙に魔力の濃い森を見つけたじゃない。あれってどのあたりだったかしら?」「あ、えっと、えっと。た、たしか、お、オートの、に、に、西のほう?」「ああ、そうだ。そうだったわね。うん。思い出したわ。案内してあげましょうか?」「ありがとう」 こうして俺たちはメリッサちゃんとジェローム君が見つけたという不思議な森へと向かうこととなったのだった。
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