僕は、弱かった。<br><br> もともと地下街で搾取される側だったのだから、当たり前だろう。<br> 弱肉強食の世界で、一番下層のところにいた。<br><br> 幼かったといっても、同年代の子の中でも勝てたことはなかった。<br> 食べ物を持っていても、大人に、同年代に、誰かに奪われた。<br><br> だけどどれだけ奪われても、僕は諦めるわけにはいかなかった。<br><br> エルシェがいるから、絶対に守るべき彼女がいたから。<br><br> 一欠片でも持ち帰り、エルシェに渡した。<br> 汚くて、不味い食べ物ばかり与えてしまった。<br><br> それでもエルシェは、地下に住んでいるとは思えないほど綺麗な子だった。<br><br> 彼女の笑顔を絶えさせないために、僕は死ぬ気で食料を取ってきた。<br><br> そんな中で会ったのが、ニーナだった。<br> 僕と同じような境遇で、僕達は仲良くなった。<br><br> お互いに名前をつけ合い、僕はエレナとなった。<br> ふふっ、ニーナは僕の性別を間違えてたから、女の子っぽい名前になっちゃったんだよね。<br><br> それから僕達は、一緒に行動するようになった。<br> だけどニーナには、エルシェのことを話さなかった。<br><br> まだあの時は、僕のたった一つの宝物を話すほど信用出来なかった。<br> ニーナには悪いことをした。<br><br> そろそろ言おうかと思っていた時期に......あの事件は起きた。<br><br><br> エルシェが、攫われたのだ。<br><br><br> いつもの場所にエルシェがいなくて、すぐに攫われたと気づいた。<br> この地下街で行方が知らなくなるということは、ほぼ確実にそういうことだから。<br><br> それから僕は......どうやって探したのか覚えていない。<br><br> だけどその時から僕は、人を殺すことをいとわなくなった。<br><br> はっきりと覚えているのは、誰かの血で真っ赤になった身体のまま、エルシェを攫った者の住処に立ち尽くしていたことだ。<br><br> 攫った奴らを僕は殺したようだが、そこにエルシェはいなかった。<br> すでにどこかの貴族に売ったようだ。<br><br> あれだけ可愛い子だ、すぐに、そして高値で売れたことだろう。<br> そのことを思うと苛立ち、もう声も出せない死体に握っていたナイフを振り下ろしたことを覚えている。<br><br><br> すぐにその貴族の元へと向かったが、さすがに人攫いのような輩とは護衛の力が違った。<br> 僕は簡単に負けて、捕らえられた。<br><br> エルシェを残して、殺されてしまう......そう思ったのだが。<br><br> その貴族は、僕を実験台として使うために生かした。<br><br> 実験が全く上手くいっておらず、駄目元で僕を試したのだ。<br><br> そして......幸か不幸か、僕は実験台としては最良の存在だった。<br><br>「はははっ! 素晴らしい! まさかここまで耐えてくれるとは! 最高の拾い物をした!!」<br><br> 僕が地獄の底で苦しんでいる最中に、貴族の男が興奮した様子でそう叫んでいるのが耳に残っている。 ...
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