見慣れた湿地のダンジョンを、パープルシスターネプギアは、一人で歩いていた。<br><br>今日のクエストは新種のモンスターの調査で、何体かを倒してその一部を持ち帰るのが目的。 やはりというか姉のネプテューヌは仕事をする気が無かったようで、甘いネプギアは仕事を全て請け負った。<br><br>問題の新種だが、姿形は一切不明。依頼主は無表情で「新種がいた、女神様に調査してほしい」としか言わなかったためだ。 もっとも、モンスターに関する問題はほとんど女神の仕事であるため、特に疑問に思わずに調査を請けたのだが。<br><br>「それにしても、モンスター・・・見つからないなあ」<br><br>女神化してモンスターを倒しながら探索をしていたのだが、歩いても歩いても新種のモンスターは見つからない。 パープルシスターは依頼主の見間違いだったのではと思い始めていた。<br><br>「隅々まで見回ったけど、見たことあるモンスターしかいないし・・・。ギルドになんて言おうかな」<br><br>少し疲れて、立ち止まるパープルシスター。そんな無防備な少女めがみを狙う怪しい影が頭上の木から伸びていた。<br><br>それは肉塊のミミズというべきだろうか、とにかく不気味なモンスター。先には細く赤い管状の針が付いており、全体的にかなり細長い。 蛇のように木に絡まり、ぬるりぬるりと音を立てずにパープルシスターの後頭部に忍び寄る。<br><br>そして。<br><br>ズッ!とパープルシスターの頭に鈍い衝撃と激痛が走った。<br><br>「いっ!?」<br><br>油断していたところへの衝撃。何が起きたのかわからず混乱する。<br><br>「な、なに!?頭になにか刺さったの・・・!?」<br><br>急いで確認しようとするが、頭が動かない。 いや、腕も足もピクリとも動かなかった。<br><br>「・・・!?」<br><br>口も思うように動かなくなり、声を出すこともできなくなってしまう。 金縛りによる恐怖を感じていると、今度は虚脱感。<br><br>ズル・・・ズル・・・ジュルル・・・<br><br>何かを吸われるような音がする。<br><br>「あっ・・・へっ・・・?」<br><br>間抜けな声が口から漏れる。<br><br>(なにがおきてるの、おねえちゃん、たすけて)<br><br>思考もだんだんできなくなっていき、ちゅるちゅると何かを吸われる音と感覚だけが頭の中に響く。<br><br>ちゅるちゅる・・・ちゅるちゅる・・・<br><br>顔を真っ青にして、ただ無抵抗で吸われていると。<br><br>ズッ!<br><br>と、左の耳に何かが刺さった。<br><br>「あがっ・・・!?」<br><br>耳から入ってきたのは肉塊モンスターの反対側。 奥までくちゅくちゅと音を立てて入り込み、邪魔なものはぐっちゃぐっちゃと食い破って脳に到達。 脳内の空いたスペースに居座り、神経への浸食を始めた。<br><br>「オ・・・アア・・・ヒ・・・」<br><br>(・・・おねえちゃん、おねえちゃん、おねえちゃん・・・)<br><br>獲物となった哀れな少女めがみは、涙を流しながら訳の分からない声を上げることしかできない。 思考もできず、頭の中では最期に考えていた言葉を反芻しているだけだった。<br><br>脳を吸われ、身体には勝手な命令を植え付けられたせいで動けないまま、その中身が置き換わっていく。<br><br>モンスターは吸ったばかりの脳みそを即座に消化し、得たエネルギーと情報で身体の機能を奪っていく。 奪われる過程でパープルシスターの身体がビクンビクンと跳ねる。だが倒れることはない。 ついにその頭の中は空っぽになってしまい、首から下はただの肉人形と化した。<br><br>やがて、頭に刺さっていた針がずるっと抜けた。パープルシスターの頭はガクリと垂れさがり、ようやく変身が解けた。 針の付いていた部分は、肉塊モンスターと繋がっているのでネプギアの耳の中へ収納されていく。<br><br>そして。<br><br>「おねえちゃん」<br><br>肉人形ネプギアが言葉を発した。 身体がビクっと反応し、右手、左手と動き始める。 全身が動くことを確認すると、頭をゆっくりと上げていき、視覚の動作も確かめる。 耳と後頭部から血が流れたので、中から綺麗に埋める。<br><br>「おねえちゃん、おねえちゃん・・・」<br><br>ぶつぶつと呟きながらふらふらと歩き始めるネプギアだった「それ」は、恐ろしいほど顔に表情が無かった。<br><br><br><br>女神候補生のネプギアからきた報告は「新種のモンスターなどいなかった」というものだった。 いつも表情豊かで可愛らしいネプギアが、凍り付くような無表情でやってきたので、ギルドの人間はとても驚いたという。 ただ、次の日にはいつもの表情に戻っていたため、たまたま機嫌が悪かったのだろうと結論付けられた。 ...
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